こんにちは。
ファイナンシャルプランナーの土田です。
今年1月に日本FP協会主催のセミナーで講師を務めさせて頂きましたが、その際にテーマとしたのは「相続」でした。
実際に私も相続相談を行っている「実務家」として、現場で起こっている「争族」問題や、今後起こるであろう「認知症対策としての家族信託活用」などについて解説しました。
セミナーでも少し触れましたが、秋田県でも大きな問題になっているのは「土地の未登記問題」です。
これは相続が起こった際に、例えば実際には長男が実家に住み相続したようになっていても、不動産登記手続きは行っていない状態で、その長男が亡くなった時に長男の子が不動産登記をしようとすると、父の兄弟など、長男の子からすると祖父の法定相続人全員から遺産分割協議書に実印を押印してもらわないと登記できない状態になっているというものです。
この2世代程度であればまだ良いのですが、これが3世代(長男の子の相続時)になってしまうと、亡くなっている方も多く、また連絡を取るのも大変になるので(曾祖父の兄弟の子孫なんて通常一度も面識ないという場合が多いのではないでしょうか?)非常に骨の折れる手続きになってしまいます。(費用面でも時間の面でも本当に大変です)
これが自宅ではなく、「山林・田畑・原野」などになると余計にそうなっていて、資産価値はあまりないケースが多いとはいえ固定資産税は掛かりますし、相続人にとって重い負担になっていることもあります。(特に精神的に負担が大きいです)
この様に、相続で登記変更していない土地が日本全体ではなんと、九州全土!?くらいの面積になっているといわれているので、これは様々な面で、例えば登記がきちんとされていないと、その上に建っている建物を壊して新しい建物を建てられないなどのマイナスの影響を与えています。
それを受けて、今年4月に法改正が行われ、相続登記が義務化され、3年以内に申請することになりました(23年施行)。また相続で取得した土地を国に帰属させる制度もできましたので、いらない土地は国に渡すことで、これ以上未登記の土地を増やさない様にしようとしています。
しかし、この国への引き取り制度にも問題があるようです。
2021/7/1 日経新聞 朝刊 「相続土地、処分なお厳しく」
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210701&ng=DGKKZO73444820R00C21A7EA1000
以下引用
増える空き家や所有者不明の土地の対策として今年4月、土地を手放すための新制度ができ、2023年にも使えるようになる。相続した土地を最終的に国が引き取ると決めたことは大きな前進だが、条件は厳しく、利用見込みはわずか1%弱という試算も。手放す前の段階で空き家を有効活用する民間の知恵がより重要になっている。
条件・負担厳しく
「期待外れだ」。親族が残した岡山県の空き家を約20年管理する東京都の無職男性(72)はこぼす。道路と接する幅など現行の規制ができる前に建てたため、解体すると建て直せない。買い手はつかず、地元の役所にも支援を断られた。手放そうと国の新制度に期待したが、「条件や負担の面で使えると思えない」。
新制度「相続土地国庫帰属制度」について、大阪経済法科大学の米山秀隆教授は「問題のある土地を最終的に誰が管理するかを示す第一歩」と一定の評価を示す。売却はおろか無償譲渡さえ拒否される空き家・空き地の所有者はそれ以上、打つ手がなかったが、少なくとも最後は国が引き取る方向は明確になった。
ただ、利用条件は厳しい。建物があってはいけないので、所有者は自己負担で上物を解体する。土壌汚染や埋設物がないことも必要。審査手数料に加え、10年分の土地管理費相当額も払ってやっと手放せる。参考となる国有地の10年分管理費は、市街地の200平方メートルの宅地で約80万円だ。
制度が議論されているさなかの20年8月に国が示した試算では、利用の見込み率はわずか0.95%。「あくまで参考値」(法務省)だが、確定した新制度でも試算時点から主な基準は緩和されていない。「実際の利用率は1%以下でもおかしくない」と米山氏はみる。
引用終わり
記事の通り、利用条件が非常に厳しいこともあり、制度の利用者は1%程度に留まりそうです。
国としても、あまり国家帰属の土地を増やされても困る(管理もですが、固定資産税も減りますし)というのが本音であり、やはり記事にある通りで民間の知恵が必要の様です。とはいえ、都会であれば駐車場という選択肢もあるかもですが、田舎では更なる知恵が必要ですね。
この様な土地も資産ですから、しっかりと活用できる状態にするためにも、相続登記は行っていきたいところです。この法律を期に、相続登記が当たり前という意識付けになれば良いですね。
今日もありがとうございました。